相続放棄で自宅不動産を失いたくない方へ
相続放棄とは,亡くなった方の資産も負債(借金,債務)も相続しないという制度です。
家庭裁判所に申し立てて受理されることになります。
ところで,相続放棄について民法は以下のとおりとしています。
相続の承認又は放棄をすべき期間
第915条 相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。
ただし、この期間は、利害関係人又は検察官の請求によって、家庭裁判所において伸長することができる。
2 相続人は、相続の承認又は放棄をする前に、相続財産の調査をすることができる。
1 相続放棄は負債(借金,債務)も相続しませんが,資産も相続できません
相続放棄は負債(借金,債務)も相続しませんが,資産も相続できません。
その結果,残しておきたい財産があっても,次順位で単純相続した相続人がいればその人の所有に,全員が相続放棄すれば相続財産管理人が処分することになります。
2 自宅不動産(住んでいる家)の場合
相続人が相続放棄をしますと,被相続人が所有し相続人と被相続人が住んでいた自宅不動産(住んでいる家)は,次順位の相続人で単純承認した人が所有することになりますので,明け渡さなければなりません。
もし相続人全員が相続放棄をすると,自宅不動産(住んでいる家)に担保権が設定されている場合は競売されますし,担保権が設定されていない場合は,相続財産管理人が選任され,管理人において自宅不動産(住んでいる家)を含む財産を処分して債権者への配当に供します。
つまり,担保権が設定されていようが,いなかろうが家,自宅不動産(住んでいる家)は明け渡さなければなりません。
よって,自宅不動産(住んでいる家)を残したいという希望がある方は,単純に相続放棄をしてはいけないということになります。
3 いくつかの方法
自宅不動産(住んでいた家)を維持するためのいくつかの方法としていくつか考えられます。
①全員が相続放棄をして,自宅不動産(住んでいる家)を取得したい人が相続財産管理人から買い受ける
②限定承認を申立て,自宅不動産(住んでいる家)を守る
①の場合,全員が相続を放棄してくれるか,全員が放棄してくれたとしても,相続財産管理人から買い取らなくてはならないことになります。
相続財産管理人は,債権者の目を気にしますので,買い取れるかはわかりません。
買い取れなかったら後の祭りです。
②の場合であれば,他の方には相続放棄してもらい,自宅不動産(住んでいる家)を取得したい人だけが限定承認をすると,相続財産管理人がつかないことになります。
こうすると,自宅不動産(住んでいる家)を取得したい人主導で限定承認の手続きをすすめ,自宅不動産(住んでいる家)を確保できるようになります。
このノウハウを持っている弁護士はほとんどいません。
なお,詳しくは「限定承認のメリットとデメリット」を参照ください。